和同開珎(古和同)の歴史|奈良時代の貨幣制度と日本最初の貨幣をわかりやすく解説

実家の整理や遺品整理をしていると、「和同開珎」と書かれた古い銅銭が見つかることがあります。
「これが教科書に載っていた日本最初期の流通貨幣なのだろうか?」 「古和同という名前も聞くけれど、何が違うのだろう?」
そのような疑問を持って調べ始める方は少なくありません。
和同開珎は、日本で本格的な貨幣制度が始まったことを象徴する歴史的な貨幣です。しかし現在「和同開珎」と呼ばれているものの中には、鋳造された時期や特徴が異なる種類が複数存在し、専門家でも慎重な確認が必要になるケースがあります。
また、長い年月の中で模造品・復刻品・教材用レプリカも数多く作られてきたため、「和同開珎」と刻まれているだけで奈良時代の貨幣と判断することはできません。
この記事では30年以上古銭鑑定に携わってきた経験をもとに、
- 和同開珎が誕生した歴史
- 奈良時代の貨幣制度
- 古和同とは何か、新和同との違い
- 自己判断が難しい理由と保管のポイント
について解説します。売却を考えている方だけでなく、「まず歴史を知りたい」「本物かどうか確かめたい」という方にも役立つ内容です。
和同開珎とは?日本最初期の流通貨幣と呼ばれる理由
708年に発行された国家の貨幣
和同開珎(わどうかいちん・わどうかいほう)は、西暦708年、奈良時代初めに発行された、日本最初期の流通用鋳造貨幣として知られています。
それ以前にも富本銭など古代貨幣の存在が確認されていますが、国家が流通を意図して組織的に発行した貨幣という意味では、和同開珎が歴史上きわめて重要な位置を占めています。
現在でも歴史の教科書に登場することから「日本最初のお金」と記憶している方も多いですが、現在は富本銭などの先行例も知られており、和同開珎は「日本最初期の流通貨幣」として理解すると正確です。しかし実際には、和同開珎にも複数の種類や研究上の見解が存在しており、すべてが同じものではありません。
鑑定士の目🔍 「和同開珎」という文字がそろっているだけでは種類の判断はできません。書体の線質・鋳肌・外縁の厚み・方孔の角の仕上がりなど、複数の要素を同時に確認して初めて鋳造時期の傾向が見えてきます。
「和同」「開珎」の名称が示す意味
「和同」は、和銅元年に武蔵国秩父郡から銅が献上されたことを背景に、年号が「和銅」と改められたことと関係するとされています。この発見を記念して年号が「和銅」と改められ、その年間に鋳造された貨幣であることから「和同開珎」と名付けられたとされています。
「開珎」は「宝を開く」といった意味合いで理解されることが多く、「珎」は「寳」の略字と説明される資料もあります。当時の日本は中国の制度を積極的に取り入れており、貨幣名にもその影響が色濃く表れています。
なぜ貨幣制度が必要だったのか
奈良時代以前の日本では、米や布などの物資を交換する取引が中心でした。しかし律令国家として中央集権化を進めるためには、税を集める・官僚へ給与を支払う・都市での商取引を活発にするといった、統一された経済制度が必要になります。
政府は中国・唐王朝の制度を参考にしながら貨幣経済の導入を進めました。つまり和同開珎は単なる「古いお金」ではなく、日本という国家が新しい経済制度へ移行する象徴でもあったのです。
古和同と新和同の違い|歴史から見る種類ごとの特徴
古和同とは初期に鋳造されたグループのこと
和同開珎について調べていると「古和同(こわどう)」と「新和同」という呼び方を目にすることがあります。これらは当時の正式名称ではなく、現在の古銭研究・収集の世界で鋳造時期や特徴を区別するために使われている分類名です。
古和同とは、和同開珎の中でも初期鋳造と考えられる一群を指す収集・研究上の分類名です。ただし、分類基準には研究者や市場で見解差があるため、断定には注意が必要です。力強く個性的な書体、線の太さや文字の形のばらつき、現存数が少ないとされる種類もありますが、分類や保存状態によって評価は大きく異なるため、「古和同=すべて希少」とは言い切れません。ただしこれはあくまで研究上の傾向であり、摩耗や腐食が進んだ個体では本来の特徴が失われていることも多くあります。
鑑定士の目🔍 古和同かどうかを判断する際には「珎」の字が重要な観察点の一つになります。ただし、最初に見る箇所は鑑定士や分類法によって異なり、文字だけで結論は出せません。この文字は書体の個性が最も表れやすく、線の走り方・止め・払いの角度に初期鋳造ならではの特徴が残ることがあります。ただし摩耗が進んだものでは判断が難しくなるため、必ず他の特徴とあわせて総合的に確認します。
新和同の特徴と見分けのポイント
新和同とは、古和同と区別される後期系統の和同開珎を指す分類名です。書体・鋳造状態・出土傾向などを総合して分類されます。貨幣制度が徐々に整備される中で鋳造技術も安定し、書体や形状に一定の均一感が見られるようになります。
初心者が最も気にされるのが「どこを見れば違いが分かるのか」という点でしょう。鑑定士は一か所だけではなく、次の複数ポイントを総合的に確認しています。
① 文字の線質 「和」「同」「開」「珎」の4文字をそれぞれ確認します。線の太さ・勢い・止め払いの表現に違いが見られる場合があります。「開」の左右のバランス、「珎」の文字全体の形が観察の起点になります。
② 外縁(ふち)の仕上がり 貨幣の外側の縁は鋳造技術の違いを知る手掛かりです。均一な厚みか、場所によって変化があるかも確認します。
③ 方孔(中央の四角い穴) 鋳型の違いが表れやすい部分です。角の丸み・内側の仕上がり・四隅の状態を観察します。
④ 鋳肌(いはだ) 長い年月を経た自然な表面なのか、近年作られた複製品なのかを見極める最重要ポイントです。経験豊富な鑑定士ほど鋳肌を重視します。
鑑定士の目🔍 鋳肌の確認は最も難しく、最も重要な工程です。奈良時代の実物であれば、長い年月による自然な酸化・摩耗・埋蔵環境の影響が複雑に現れます。ただし、後世の写しやレプリカにも人工的な古色が付けられることがあるため注意が必要です。一方、新しいレプリカは人工的な加工を施していても質感が微妙に異なります。この違いは写真では伝わりにくく、実物を手に取り、角度を変えながら観察することで初めて見えてきます。
歴史研究でも意見が分かれることがある
和同開珎は1300年以上前に作られた貨幣です。そのため現在でも研究者によって、どこまでを古和同と呼ぶか・鋳造順序・分類方法などについてさまざまな見解があります。
インターネット上には「一枚の写真だけで種類を断定する記事」も見られますが、本来は複数の特徴を総合的に確認して判断する必要があります。「これは絶対に古和同です」と写真だけで断定することは、専門家でも慎重になる分野なのです。
和同開珎が日本の貨幣制度に与えた影響
皇朝十二銭の始まりとなった貨幣
和同開珎は、奈良時代から平安時代にかけて発行された銅銭群「皇朝十二銭」の最初の貨幣とされています。その後も政府は新しい貨幣を発行しながら貨幣制度を維持しようとしました。つまり和同開珎は一度だけ作られた貨幣ではなく、日本の貨幣史全体の出発点だったのです。
ただし実際には、「日本最初の貨幣」と聞いて想像するような全国的な普及はすぐには実現しませんでした。地方では米・布・農作物を使った交換が長く続いており、和同開珎は国家的に発行された貨幣ですが、当初から現代の硬貨のように全国で日常的に使われたわけではなく、都や官庁周辺を中心に利用が進んだと考えられています。
鑑定士の目🔍 「全国で流通していたはずだから、どこからでも出てくる」という誤解が見受けられます。実際には流通範囲が限られており、良質な保存状態で発見される個体は非常に少ない。発見状況・来歴・付属品(桐箱・古い紙包み等)が揃っている場合は、それ自体が重要な歴史的情報になります。
遺品で見つかった和同開珎が本物とは限らない
歴史的人気の高い貨幣であるため、和同開珎は知名度が高いため、後世の写し、教材用レプリカ、収集用の模造品なども見られます。したがって「古そうに見える」「文字がある」だけで奈良時代の実物とは判断できません。さらに近年では精巧なレプリカも流通しています。
「古そうに見える」「文字が和同開珎になっている」「祖父が大切に保管していた」という理由だけで奈良時代の貨幣とは判断できません。一方で、一見すると普通の古銭に見えても、歴史的に重要な特徴を持つものが見つかるケースもあります。自己判断だけで結論を出さず、専門家による総合的な確認を受けることが、本来の価値や歴史的意義を知る近道です。
和同開珎を見つけたら気を付けたい保管方法
汚れていても絶対に磨かない
最も重要なのは、汚れていても磨かないことです。
長年付着した酸化被膜や変色は、長い歴史を経た証拠でもあります。市販の研磨剤や金属磨きで表面を磨いてしまうと、本来の表面状態・鋳肌・自然な経年変化が失われる可能性があります。水洗いや薬品による洗浄も避けてください。「きれいにしたほうが良い」と思って行った作業が、かえって鑑定を難しくしてしまう場合があります。
素手で頻繁に触るのも禁物です。人の手には皮脂や汗が付着しており、これらが金属表面に残ることで保管中に変色が進むことがあります。観察するときは必要以上に触れず、縁の部分を持つようにしましょう。
鑑定士の目🔍 「磨いてしまった」という状態で持ち込まれる古銭は少なくありません。残念ながら鋳肌が失われた個体は、たとえ本物であっても種類の特定が困難になります。見つけたままの状態で保管し、判断は専門家に委ねることが、その古銭の歴史的情報を守る唯一の方法です。
湿気の少ない場所・付属品も一緒に保管する
古銭は湿気に弱い資料です。保管する際は、湿度変化の少ない場所・直射日光が当たらない場所・温度変化の少ない場所を選びましょう。ビニール袋へ密閉するよりも、通気性のある中性紙製の保管資材を利用すると安心です。複数枚ある場合は一枚ずつ分けて保管することで擦れを防げます。
遺品整理では桐箱・古い紙包み・メモ書き・古銭袋・古い収集帳などが一緒に見つかることがあります。これらは来歴を知る手掛かりになる場合があるため、古銭だけを取り出して処分するのではなく、付属品もまとめて保管しておくことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 和同開珎はすべて奈良時代のものですか? いいえ。和同開珎という名称の古銭だけで奈良時代のものとは判断できません。後世に作られた復刻品・教材用・収集用のレプリカも数多く存在するため、総合的な確認が必要です。
Q. 古和同なら必ず価値がありますか? 古和同は研究上重要な分類ですが、「古和同だから高く評価される」とは一概には言えません。保存状態・種類・歴史的特徴など、さまざまな要素を総合的に確認して評価されます。
Q. 汚れているので磨いたほうがよいですか? おすすめできません。表面の酸化や経年変化は長い歴史を物語る重要な情報です。研磨剤・薬品・水洗いなどを行うと本来の特徴が失われる可能性があります。見つけたままの状態で保管してください。
Q. 写真だけで本物かどうか分かりますか? 写真は参考になりますが、それだけで断定することは困難です。書体だけでなく、鋳肌・摩耗・外縁・方孔など複数の特徴を確認する必要があります。
Q. 1枚だけでも相談してよいのでしょうか? もちろんです。遺品整理で見つかった1枚だけの古銭でも、種類が分からない状態で相談される方は多くいらっしゃいます。「価値があるか知りたい」「本物かどうか確認したい」という段階でのご相談は決して珍しいことではありません。
まとめ|和同開珎の歴史を知ることが正しい判断への第一歩
和同開珎は、富本銭など先行する古代貨幣の存在を踏まえたうえで、日本で本格的な流通貨幣制度が整えられていく過程を象徴する歴史的な貨幣です。奈良時代に国家が貨幣制度を整備する中で誕生し、その後の日本の貨幣史に大きな影響を与えました。
しかし現実には、書体・鋳造方法・保存状態・摩耗・鋳肌などを総合的に確認しなければ、種類や真贋を判断することはできません。「文字だけで分かる」「写真だけで判別できる」といった情報もインターネット上には見られますが、実際の鑑定では一つの特徴だけで結論を出すことはありません。
一見すると普通の古銭に見えても、歴史的に重要な特徴を持つものが見つかることもあります。もし遺品整理や蔵の整理で和同開珎らしき古銭を見つけた場合は、磨いたり洗ったりせず、そのままの状態で保管してください。
自己判断で状態を損ねる前に、1枚からでも専門家へ相談したい理由
「偽物だったら恥ずかしい」「1枚だけで相談していいのか分からない」——そう思ってためらっている間にも、磨いたり、誤った保管をしたりすることで、本来の歴史的特徴が失われてしまうことがあります。
古銭の確認で注意したいのは、「偽物かどうか」だけではありません。奈良時代の実物や重要な古銭だった場合に、磨き・洗浄・付属品の処分によって、種類や来歴を判断する手掛かりが失われてしまうことです。
写真だけでは伝わらない鋳肌の質感、実物を手に取って初めて分かる摩耗の様子——これらは電話でお話しいただくだけでも、適切な保管方法や次のステップをお伝えできます。売却するかどうかを決めていない段階でも、まったく問題ありません。
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