明治通宝と日本銀行券の違い|比較でわかる見分け方を鑑定士が解説

遺品整理や実家の片付けをしていると、古い紙幣がまとめて見つかることがあります。
その中に「明治通宝」と書かれたものと「日本銀行券」と書かれたものが混ざっていて、違いが分からず戸惑う方は少なくありません。
どちらも古い紙幣であるため、一見すると同じように見えてしまいます。
しかし実際には、発行した機関も時代も役割もまったく異なります。
「古い紙幣だから価値があるはず」「日本銀行券のほうが新しいの?」と疑問に思う方も多くいらっしゃいます。
この記事では、30年以上古銭鑑定に携わってきた視点から、明治通宝と日本銀行券の違いを比較しながら分かりやすく解説します。
査定現場でよく見るチェックポイントや、価値を左右する要素まであわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
発行主体がまったく違う|明治通宝は「政府」、日本銀行券は「日本銀行」
明治通宝は、明治政府が国内で流通していたさまざまな紙幣を整理し、統一する目的で発行した政府紙幣です。
明治初期には、江戸時代からの藩札に加え、太政官札などの政府紙幣や民間銀行が発行する紙幣など、複数の紙幣が流通していました。明治通宝は、こうした状況のもとで、それまでの紙幣を統一的な紙幣に交換することを目的として1872年(明治5年)に発行されました。
ドイツに製造を依頼したことから「ゲルマン紙幣」とも呼ばれ、当初はドイツで印刷した後、日本で「明治通宝」の文字などを加えて完成させていました。
参考:お金の歴史に関するFAQ(日本銀行金融研究所貨幣博物館)(https://www.imes.boj.or.jp/cm/history/historyfaq/)
参考:お札の歴史(明治)(独立行政法人国立印刷局)(https://www.npb.go.jp/product_service/intro/ostu_history/osatsu_history2.html)
一方の日本銀行券は、その名のとおり日本銀行が発行する紙幣です。
現在私たちが使っている一万円札や五千円札も、すべて日本銀行券にあたります。
日本銀行は1882年(明治15年)に設立され、最初の日本銀行券は1885年(明治18年)に発行されました。
明治通宝には「日本銀行券」という表記がありません。
この一点は、両者を区別する大きな手がかりになります。
政府や国立銀行などがそれぞれ紙幣を発行していた仕組みから、中央銀行である日本銀行の銀行券へ一元化されていったことは、日本の金融制度における大きな転換点でした。日本銀行によると、政府紙幣と国立銀行紙幣は、日本銀行券への切り替えが進んだ後、1899年(明治32年)に通用停止となっています。
参考:沿革 1850年~(日本銀行)(https://www.boj.or.jp/about/outline/history/his_1850.htm)
つまり明治通宝と日本銀行券は、単なる「新旧」の関係ではなく、紙幣を発行した主体と制度上の位置づけが違うのです。
なお、明治時代には「改造紙幣」や「兌換銀行券」といった紙幣も発行されており、遺品整理の現場ではこれらが一緒に見つかることもあります。
名称だけを見ると難しく感じるかもしれませんが、「誰が発行したか」「どのような制度のもとで発行されたか」という視点で見れば、整理して理解できます。
主な違いをまとめると、明治通宝は明治政府が1872年から発行した政府紙幣であり、券面には「明治通宝」と記されています。一方、日本銀行券は日本銀行が1885年から発行している中央銀行券で、券面には「日本銀行券」または旧字体による「日本銀行兌換銀券」「日本銀行兌換券」など、発行時期に応じた表記があります。
また、明治通宝は文字や幾何学的な装飾を中心とした意匠で、人物の肖像は採用されていません。日本銀行券は券種や発行時期によってデザインが異なり、肖像を使用していない券もありますが、多くの券種では人物の肖像や各時代の偽造防止技術が採用されています。
鑑定士の目🔍
査定の際は表記の有無だけでなく、書体や印刷線の状態、模様の配置、余白の取り方まで確認します。明治通宝は装飾的な模様が券面全体に広がる一方、日本銀行券は発行時期によって肖像や図柄、偽造防止技術が異なり、紙幣の「顔つき」そのものが変わっていく点も見分けの参考になります。専門用語が多く難しく感じるかもしれませんが、まずは「政府が発行した明治通宝か、日本銀行が発行した銀行券か」という一点を押さえておけば十分です。
一目でわかる見分け方|文字・デザイン・印刷をチェック
最も簡単な見分け方は、紙幣の表面に「明治通宝」または「日本銀行券」に相当する文字があるかどうかです。
「明治通宝」の文字が記されていれば明治通宝です。日本銀行が発行した紙幣には、「日本銀行券」のほか、古い券種では「日本銀行兌換銀券」や「日本銀行兌換券」などと記されている場合があります。
そのため、「日本銀行券」という文字が見当たらないから明治通宝であるとは限りません。太政官札、改造紙幣、国立銀行紙幣など、明治通宝以外の古い紙幣もあるため、券面全体の文字を確認することが大切です。
デザインの雰囲気にも違いがあり、明治通宝は縦長の券面に文字や幾何学的な装飾が細かく配置されています。
日本銀行券は券種や時代によって構成が異なりますが、肖像や建築物、動植物などを取り入れたものが多く、発行されたシリーズごとにデザインが変化しています。
色合いにも券種ごとの違いがありますが、経年による退色や変色もあるため、色だけを根拠に種類や真贋を判断することはできません。
サイズや色合いだけで判断するのはおすすめできません。
額面や発行時期によって差があるため、必ず文字とデザインをあわせて確認しましょう。
また裏面のデザインも券種やシリーズごとに異なるため、表面だけでなく裏面もチェックすることが大切です。
ご自宅で確認される場合は、表面・裏面・全体・文字部分の4か所を撮影しておくと、見比べる際にとても分かりやすくなります。
スマートフォンのカメラでも撮影できますが、直射日光を避け、反射や影が入らない明るい場所で撮影すると、模様や色の違いを確認しやすくなります。
本物の紙幣には、当時の印刷方法による細かな線や複雑な模様が見られます。
ただし、現在の印刷技術で作られた複製品にも精巧なものがあるため、線が細かいという特徴だけで本物と断定することはできません。
紙質や紙の繊維も確認項目の一つですが、経年劣化や保管環境によって状態が変化します。手触りだけで真贋を判断せず、紙を傷めないよう必要以上に触らないことも大切です。
また、印刷位置のずれやインクの濃淡が見られても、製造時の個体差や経年変化による場合があります。一か所だけで真贋を判断するのは危険です。
ネット上にはレプリカや復刻版の情報も出回っているため、「本物だと思っていたら複製品だった」というケースも考えられます。
反対に、経年で色あせた本物を「偽物かもしれない」と誤解してしまう可能性もあります。
文字・印刷・紙質・寸法などを一つずつ見比べていくことが、見誤りを防ぐための基本です。
鑑定士の目🔍
現場では「一つの特徴だけ」で真贋を判断することはありません。文字、印刷の細かさ、紙質、寸法、発行年代、保存状態などを総合的に見ています。写真だけを見て自己判断すると、本物を偽物と思い込んでしまったり、逆に複製品を本物と見誤ってしまったりする可能性があるため、判断に迷ったときはそのままの状態でご相談いただくのが安心です。
買取価格の目安と、査定前に知っておきたいこと
「明治通宝と日本銀行券、どちらが価値がありますか」というご質問はよくいただきます。
しかし、名称だけでどちらが高いと一概にはいえません。
価値は券種や額面、発行時期、記番号などの違い、保存状態、市場での流通量や需要などによって大きく変わります。
明治通宝にも複数の額面があり、日本銀行券にも明治時代から現在まで多くの券種があるため、買取価格を一律に示すことはできません。また、市場での評価や取引価格は時期によっても変動します。
同じ明治通宝でも額面や保存状態などによって評価が大きく異なることがあり、日本銀行券でも希少性の高い券種や状態のよいものが高く評価される場合があります。
「ボロボロだから値段はつかないだろう」と諦めてしまう方もいますが、状態が悪くても券種や希少性によっては評価の対象になることがあります。
自己判断で「価値がない」と決めつけてしまう前に、一度プロの目で確認してもらうことをおすすめします。
査定前には、次の点を確認しておくとスムーズです。
「明治通宝」や「日本銀行券」などの表記、額面、記番号、折れ・破れ・補修の有無です。
写真を撮影する場合は、表面・裏面・全体像・文字部分が鮮明に写るようにしておくと、事前のご相談もしやすくなります。
そして最も大切なのは、自分で修復やクリーニングをしないことです。
セロハンテープでの補修や水洗い、漂白、アイロンがけは、紙や印刷を傷め、評価に影響する可能性があります。
鑑定士の目🔍
汚れや変色も、その紙幣が歩んできた歴史の一部です。無理にきれいにしようとするより、見つけたときの状態のまま、直射日光や高温多湿を避けて保管していただくほうが、結果的に状態の維持につながります。紙幣の保存に適した保護用ホルダーなどに入れ、折り曲げずに保管しておくと安心です。輪ゴムで束ねる、クリップで留めるといった保管方法も、変色や圧痕、さびの付着などの原因になるため避けたほうがよいでしょう。
明治通宝、日本銀行券、改造紙幣、政府紙幣など、遺品整理では複数の種類が混在して見つかることも珍しくありません。
なお、「改造紙幣」は明治政府が発行した政府紙幣の一種であり、「政府紙幣」とは別系統の紙幣ではありません。紙幣を仕分ける際には、明治通宝や改造紙幣などの政府紙幣、日本銀行券、国立銀行紙幣といった発行主体ごとの違いを確認することが大切です。
1枚だけの相談は決して珍しいことではなく、種類の仕分けだけでもお役に立てる場合があります。
「価値がなかったら恥ずかしい」「偽物だったらどうしよう」「相続品なので勝手に売れない」と不安に思う必要はありません。
「こんなものを持ち込んで迷惑ではないか」と気にされる方もいますが、だるま3では査定のご相談を無料で受け付けていますので、遠慮なくご利用いただけます。
売却を前提としない仕分けだけのご相談も、歓迎しております。
強引に売却を勧めることはなく、電話でご不明点をご相談いただくことも可能です。
もし価値のあるものだと分かれば、ご家族に紙幣の種類や評価について伝える際の参考にもなるでしょう。
自分で判断して損をしてしまう前に、まずはプロに見てもらうことが、遠回りに見えて実は一番の近道です。
だるま3では、1枚からのご相談や「本物かどうか知りたい」というご質問だけでも歓迎しております。
出張査定を無理にお勧めすることはなく、電話相談のみのご利用も可能です。
売却を前提とする必要はありませんので、気になる紙幣が見つかった際は、お気軽に無料電話相談をご利用ください。





































